吹奏楽の名曲シリーズ。
今回は、ロバート・ジェイガー作曲の『シンフォニア・ノビリッシマ(Sinfonia Nobilissima) 』をご紹介します。
『シンフォニア・ノビリッシマ』はどんな曲?
作品概要
タイトル:シンフォニア・ノビリッシマ(Sinfonia Nobilissima)
作曲家:ロバート・ジェイガー(Robert Jager)
演奏時間:約6分半
グレード:4
出版:テオドール・プレッサー(Theodore Presser)
ジェイガーの華麗なる実績
作曲は、1939年アメリカ生まれのロバート・ジェイガー。
ミシガン大学で音楽を学び、アメリカ海軍に入隊中は軍の音楽学校で編曲者を務めています。
全米吹奏楽指導者協会(ABA)が優れた吹奏楽作品に送るオストウォルド賞を3回受賞しています。
(『吹奏楽のための交響曲』、『ダイヤモンド・ヴァリエーション』、『シンフォニエッタ』)
オストウォルド賞を3回受賞しているのはジェイガーただ一人なのだそう。
また、1978年全日本吹奏楽コンクールの課題曲『ジュビラーテ』も作曲しています。
婚約者に捧げた楽曲
『シンフォニア・ノビリッシマ』は、1962~1963年に作曲されました。
「吹奏楽のための高貴なる楽章」という邦題もありますが、「シンフォニア・ノビリッシマ」と呼ばれることが多いです。
当時婚約中であった妻のルシルに捧げられた曲です。
日本でも吹奏楽コンクールや演奏会で根強く演奏されている人気の楽曲です。
主題の展開が多彩で愉しく、裏メロディー・対旋律も主張し、全ての楽器にスポットライトの当たる曲。
いろいろな表情を見せるのに、高貴さは一貫して失われないところが素敵です。
『シンフォニア・ノビリッシマ』、曲の流れとポイントは?
ティンパニのロール、そして金管の厚いハーモニーによる荘厳な序奏で始まりです。
テンポアップし主部へ。ここからは主題を様々な楽器がかわるがわる演奏し、雰囲気も次々に変化していきます。
まずはクラリネットが悠々と旋律を吹き、続いてトロンボーンが力強く。
ホルンやサックス、低音が鳴ったかと思うと、木管の高音が可愛らしく響き、コントラストが楽しい場面が続きます。
低音→トロンボーン→クラリネットと旋律がフーガになって展開。
オーボエのソロのあとは低音がブイブイ鳴らします。
そして爽やかなコルネットのソロ。
テーマパークのパレードような楽しげなセクションが終わると曲調が一転、テンポを落とし中間部へ。
クラリネットが優しくロマンチックなメロディーを吹きます。
金管の静かな伴奏をしたがえての木管の旋律が終わると、この曲の要でもあるオーボエのソロ。
金管とパーカッションを加えて膨らんでいき、全体で歌い上げます。
ホルンが高らかに裏メロを吹くところがたまりません。
音楽の最高潮で再び曲調が変わり、テンポアップして主題を再現します。
ラスト直前で一度テンポを落とし、再びテンポアップして華麗に終わります。
最後から2小節目の一音を、小節の頭から一拍ずらしていることで、最後の一音が引き締まってとてもかっこいいんです!
『シンフォニア・ノビリッシマ』~YOUTUBEで聴ける音源~
龍谷大学吹奏楽部&駒澤大学吹奏楽部
迫力たっぷり!特にボーンやホルンらの金管の存在感に圧倒されます。
大人数でありながら、一体感のある演奏。
NHK交響楽団
落ち着いたテンポの安定した演奏でした。特に中間部はゆったり。
中間部オーボエソロ、このテンポで一息で吹くのがすごい…
中間部の裏メロで吠えるホルンがかっこいいです。
『シンフォニア・ノビリッシマ』の音源・CDはどこで手に入る?
『シンフォニア・ノビリッシマ』は、シエナや東京佼成、土気シビックやなにわ他、錚々たるバンドが演奏しており、参考音源には事欠きません。
ブラスの祭典3
『シンフォニア・ノビリッシマ』の演奏で有名なのが、佐渡裕さん指揮のシエナ・ウインド・オーケストラの演奏です。
筆者もこの演奏がやはり一番好きです。
推進力がありメリハリのついた前半部。たっぷりと聴かせる中間部。ためにためた最後の一音。
抜きんでた完成度で曲の魅力を十二分に表現した、力強く熱量の高い音楽に感動します。
そのほかの収録曲も、『高度な技術への指標』、『吹奏楽のための第一組曲』、『風紋』、『フェスティヴァル・ヴァリエーション』など名曲が揃っています。
■収録曲
1.20世紀FOXファンファーレ
2.高度な技術への指標
3.シンフォニア・ノビリッシマ
4.吹奏楽のための第1組曲 変ホ長調 第1楽章 : シャコンヌ
5.吹奏楽のための第1組曲 変ホ長調 第2楽章 : インテルメッツォ
6.吹奏楽のための第1組曲 変ホ長調 第3楽章 : マーチ
7.風紋
8.フェスティヴァル・ヴァリエーションズ
9.詩のない歌
10.ディスコ・キッド(ライヴ・レコーディング)
青春吹奏楽
こちらは配信限定の、東京佼成ウインドオーケストラのアルバムです。
学生時代に取り組んだあの曲やこの曲…青春の象徴となっているような吹奏楽曲を集めた一枚。
21曲目の『シンフォニア・ノビリッシマ』は、大井剛史氏指揮の演奏です。
フレデリック・フェネルが指揮を振った9、18、24、27曲目にも注目です。
■収録曲
1.アルヴァマー序曲(ジェイムズ・バーンズ)
2.アルメニアン・ダンス パート1(アルフレッド・リード)
3.海の男達の歌(船乗りと海の歌)(ロバート・W・スミス)
4.風紋(保科洋)
5.フェスティバル・ヴァリエーションズ(トーマス・スミス)
6.ロマネスク(ジェイムズ・スウェアリンジェン)
7.吹奏楽のための第1組曲 III-マーチ (グスターヴ・ホルスト)
8.交響詩《魔法使いの弟子》(ポール・デュカス)
9.シーゲート序曲(ジェイムズ・スウェアリンジェン)
10.フェスティーヴォ(ヴァーツラフ・ネリベル)
11.復興(保科洋)
12.吹奏楽のための民話(ジム・アンディ・コーディル)
13.東北地方の民謡によるコラージュ(櫛田てつ之扶)
14.アフリカン・シンフォニー(ヴァン・マッコイ)
15.陽はまた昇る(フィリップ・スパーク)
16.バレエ音楽《シバの女王ベルキス》I- ソロモンの夢
17.バレエ音楽《シバの女王ベルキス》IV- 狂宴の踊り
(オットリーノ・レスピーギ)
18.アパラチアン序曲(ジェイムズ・バーンズ)
19.吹奏楽のための第2組曲 I- 行進曲
20.吹奏楽のための第2組曲 IV- ダーガソンによる幻想曲
(グスターヴ・ホルスト)
21.シンフォニア・ノビリッシマ(ロバート・ジェイガー)
22.マゼランの未知なる大陸への挑戦(樽屋雅徳)
23.希望の彼方へ(フィリップ・スパーク)
24.終幕の踊り[ホタ]〜組曲「三角帽子」から(マヌエル・デ・ファリャ)
25.バレエ音楽《ダフニスとクロエ》第2組曲 III- 全員の踊り(モーリス・ラヴェル)
26.楽劇《サロメ》より「七つのヴェールの踊り」(リヒャルト・シュトラウス)
27.エルザの大聖堂への行列〜歌劇《ローエングリン》から(リヒャルト・ワーグナー)
28.百年祭(2012年改訂版)(福島弘和)
29.コンサートマーチ《アルセナール》(ヤン・ヴァン・デル・ロースト)
30.ブラジル(アリー・バローゾ)
31.宝島(和泉宏隆)
32.ディスコ・キッド(東海林修)
33.たなばた(酒井格)
『シンフォニア・ノビリッシマ』の楽譜はどこで手に入る?
各出版社や楽天市場などで購入することができます。
1970年代に爆発的な人気を誇っていた『シンフォニア・ノビリッシマ』。
曲の素晴らしさは色褪せません。ぜひ若い世代の方も、一度演奏してみてくださいね!
参考URL:
橋本音源堂 ー シンフォニア・ノビリッシマ
http://h-ongendo1964annex.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-c53a.html