吹奏楽の名曲シリーズ。
今回は、真島俊夫作曲の『三つのジャポニスム(仏:Les trois notes du Japon)』をご紹介します。
『三つのジャポニスム』はどんな曲?
巨匠・真島俊夫の代表曲
『三つのジャポニスム』は、東京佼成ウインド・オーケストラの委嘱で、真島俊夫氏によって2001年に作曲された吹奏楽曲です。
グレードは4、演奏時間は約16分40秒。
真島俊夫氏は、コンクール課題曲『五月の風』の作曲や、王道ポップス曲『宝島』のアレンジャーとして有名な、日本吹奏楽界の巨匠です。
多数の楽曲を作・編曲している真島氏ですが、中でも『三つのジャポニスム』は最も代表的な楽曲といえます。
コンクール自由曲としても圧倒的な人気を誇り、吹奏楽民には「三ジャポ」と呼ばれ愛されています。
外国語のタイトルはフランス語ですが、真島氏はフランス・パリに対する強い思い入れがありました。
「ジャポニスム」は「日本趣味」の意、真島氏は洋の視点から日本を見つめなおし、この曲を書いたそうです。
日本の題材×西洋の技法
タイトルの通り、この曲は日本の原風景を題材にして作られています。
和のモチーフを西洋的な技法で表現しており、「今までと違う日本テイストの楽曲」と世界でも高く評価されました。
パーカッションには、しめ太鼓、桶太鼓、あたり鉦、手平鉦、竹鳴子など、和楽器がたくさん使われています(欧米バンドのために、通常の打楽器とも差し替え可能になっています)。
『三つのジャポニスム』、楽曲のポイントは?
『三つのジャポニスム』は、「鶴が舞う」「雪の川」「祭り」の3曲で構成されています。
1、「鶴が舞う」(La Danse des Grues)
厳寒の釧路湿原での丹頂鶴の求愛ダンスがモチーフ。
丹頂鶴は求愛行動をするとき、首を伸ばして大きく高い鳴き声をあげたり、オスとメスが対になって羽を広げ、円を描くように動いたりします。
鶴の鳴き声や羽ばたきが、管楽器や和楽器、団扇(扇子)を使って表現されます。
互いを見つめ合っているかのような「静」のシーンと、激しく舞い踊る「動」のシーンが繰り返し現れます。
サックス、オーボエのソロなどがあり、美しい旋律が奏でられます。
2、「雪の川」(La Rivière Enneigée)
冬の最上川が描写されています。
静かに流れる川に、しんしんと雪が降り積もる様子が目に浮かぶ楽曲です。
3曲の中では最も短い楽曲。
コーラングレの凛としたソロが印象的です。
3、「祭り」(La Fête du Feu)
日本の祭りの熱気あふれる情景が描かれます。
太鼓や鐘の音が鳴り響き、後半には青森のねぶたのリズムも使われ、まさに「日本の祭り」の雰囲気があふれた楽曲です。
途中テンポがゆったりとするシーンは、入道雲のある夏の空を描写しているそうです。
フィナーレに至る盛り上がりは迫力満点。
珍しいティンパニのソロもあります。
『三つのジャポニスム』~YOUTUBEで聴ける音源~
神奈川大学吹奏楽部の演奏です。
『三つのジャポニスム』は超有名曲でありながら、YOUTUBEで聴けるプロの演奏はそれほど多くありません。
その中でも貴重なフル尺の音源で、お手本にするのに適した演奏です。
世界吹奏楽大会でこの楽曲を演奏している神奈川大学は曲の理解度も深く、演奏レベルも高いです。
2005年に全国金を受賞した、春日部共栄の演奏もぜひご一聴ください。
コンポーザーズ・エディションの編曲が聴きたい方は、こちらをどうぞ。
(コンポーザーズ・エディションについては楽譜の説明の中で後述します)
『三つのジャポニスム』の音源・CDはどこで手に入る?
三つのジャポニスム / 指揮:飯森範親 / 演奏:大阪市音楽団
大阪市音楽団、2012年の定期演奏会のライブ音源です。
西村 朗『秘儀I−管楽合奏のための』、和田 薫『吹奏楽のための俗祭』など、邦人作曲家の吹奏楽曲を集めたプログラムです。
真島俊夫作品集original Works & Transcriptions
真島俊夫氏の追悼企画としてリリースされたベスト・アルバム。
Disk1には、『三つのジャポニスム』のほか、『五月の風』『鳳凰が舞う~印象:京都、石庭、金閣寺~』『巴里の幻影』といった真島氏の代表曲が、
Disk2には、『宝島』『カーペンターズ・フォーエバー』といった人気のアレンジ楽曲がたっぷり収録されています。
『三つのジャポニスム』の楽譜はどこで手に入る?
『三つのジャポニスム』の吹奏楽譜は、アトリエエム株式会社から出版されています。
アトリエエムのホームページや、ブレーンやミュージックエイトなどのオンラインショップで購入することができます。
アトリエ・エム「三つのジャポニスム」
https://www.atelierm.net/catalog/detail/code/TM0027S
楽譜にはオリジナル版と小・中編成版があり、それぞれに「コンポーザーズ・エディション」があります。
「コンポーザーズ・エディション」とは、17分ほどあるオリジナル版を、作曲者の真島氏が約7分30秒にリアレンジしたもの。コンクールで演奏する場合、こちらの楽譜が推奨されています。
楽団の規模や演奏目的に応じて楽譜を選んでみてくださいね。
日本の吹奏楽界を代表する作曲家・真島俊夫氏、その代表曲であり大人気曲、『三つのジャポニスム』。
日本が世界に誇るこの楽曲が、これからもたくさん演奏され続けていくことを願っています。
参考URL:
Wikipedia 「三つのジャポニスム」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E3%81%A4%E3%81%AE%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%9D%E3%83%8B%E3%82%B9%E3%83%A0
ブレーンオンラインショップ「三つのジャポニスム」
https://www.brain-shop.net/shop/g/gTM0027S/
東京佼成ウインドオーケストラ 2020.10.3定期演奏会プログラム
https://www.tkwo.jp/concert/pdf/tkwo150program.pdf
吹奏楽研究所「【吹奏楽名曲紹介】三つのジャポニスム (真島俊夫)」
https://suisougakulab.com/mp-lestroisnotesdujapon/