吹奏楽の名曲シリーズ。
今回は、豊かな森の情景を表情豊かに描き出した、酒井格の『森の贈り物』をご紹介します。
『森の贈り物』はどんな曲?
作曲者は酒井格(さかいいたる)さん。
『The Seventh Night of July(たなばた)』の作曲者として有名ですね。
『森の贈り物』の英語名は「Legacy of the Woods」。
グレードは5、演奏時間は7分前後です。
屋久島の深い森からインスピレーションを得て書かれた作品です。
美しく、豊かな恵みをもたらしてくれる森。そんな森をこれからも人間の手で守ってゆこうという願いがこめられています。
『森の贈り物』は、龍谷大学からの委嘱を受けて、2003年に作曲されました。
酒井格は、『森の贈り物』を含めて7曲の委嘱作品を龍谷大学に作っています。
龍谷大学はまた、2002年~2011年のコンクールにおいて8回連続で自由曲に酒井格作品を演奏し、そのほとんどで全国大会金賞を受賞しています。
『森の贈り物』、楽曲のポイントは?
出だしはあたたかな雰囲気から始まり、ほどなくして優しいメロディーのコルネットソロが響きわたります。
サックスやフルートのソロも続く前半部は、豊かな森の穏やかな様子が、伸びやかなサウンドで表現されています。
特徴的なバスクラのソロとそれに応じる木管は、作者の言う「森の長老の語り」と、相槌をうつ妖精たちの会話のよう。
スネアドラムが行進風のリズムを刻み始めると次のシーンへ。
個人的には、ここのハープの「ポーン、ポーン」という響きとグリッサンドが美しくてとても好きです!
森の生き物たちの行進が終わると、テンポは少しずつ速くなっていき、嵐がやってきて森を襲います。
嵐が落ち着くとコルネットとシロフォンのソロ。ここの6連符は難所ですが、聴かせどころでもあるので頑張りたいところ。
クライマックスは堂々としたシンフォニックな響きで一度テンポを落としたあと、再度テンポアップして輝かしいフィナーレを迎えます。
森の情景をイメージしながら演奏すると、色彩豊かなパフォーマンスができるのではないでしょうか。
作曲者によるプログラムノートはこちらをご覧ください。
https://www.gakufu.co.jp/products/suisougaku/UN/UN713/
『森の贈り物』~YOUTUBEで聴ける音源~
コンクールの音源から2つの動画をご紹介したいと思います。
まず1つめは、委嘱元である龍谷大学吹奏楽部の演奏。
2003年の吹奏楽コンクール全国大会で演奏された音源です。
龍谷大学はこの委嘱作品を、完成したその年のコンクールで自由曲として演奏しました。
そして、見事全国大会で金賞を受賞しています。
2つめは、2014年の吹奏楽コンクール、玉名女子高等学校の演奏です。
いろいろな音源の中でも、出だしのテンポがかなりゆったりとしていますが、そのぶん豊かで情感にあふれた演奏となっています。
コルネットソロはもちろん、各楽器のソロは技術も表現力も高く、ハーモニーは華やかな響き。
ぜひ参考にしたい名演です。
『森の贈り物』の音源・CDはどこで手に入る?
森の贈り物:デ・ハスケ社 邦人作品集
デ・ハスケ社の扱う日本人作曲家の作品を集めた、邦人作品集。
演奏はオランダ王立陸軍バンド「ヨハン・ヴィレム・フリソ」。
酒井格さんの作品は、『森の贈り物』のほかに『海辺の道』『お花たちのパーティー!』が入っています。
そのほか、八木澤教司さん、広瀬勇人さん、田中久美子さん、坂井貴祐さんの作品、全10曲が収録されています。
東海大学付属第四高等学校吹奏楽部 / 酒井格:森の贈り物
毎年7月に札幌Kitaraで行われている、東海大学付属第四高等学校吹奏楽部(現 東海大学付属札幌高等学校)の定期演奏会、2015年のライブ音源です。
この年、四高はコンクール全国大会の33回目の出場を決めていて、この定演の後、自由曲『森の贈り物』で見事金賞を受賞しています。
・『チャルダッシュ マリンバソロとバンドのための 』(ヴィットーリオ・モンティ/編曲 : 真島俊夫)
・『ウィンドオーケストラのためのマインドスケープ 』(高 昌帥)
など、11曲で構成されたプログラムです。
全日本吹奏楽コンクール2015 Vol.10 高等学校編V
東海大学付属第四高等学校が金賞を受賞した、2015年のコンクールライブ演奏は、こちらのCDで聴くことができます。
(8曲目が『森の贈り物』)
『森の贈り物』の楽譜はどこで手に入る?
各出版社のほか、楽天市場でも購入することができます。
豊かな森の緑の中で深呼吸しているような美しく素敵な楽曲、『森の送り物』。
定期演奏会のプログラムに、コンクール自由曲に、ぜひ演奏してみてください。
参考URL:
橋本音源堂「森の贈り物」
http://h-ongendo1964annex.cocolog-nifty.com/blog/2016/04/post-90a1.html