吹奏楽の名曲シリーズ。
今回は、4つの舞曲のイメージをそれぞれの楽章に詰め込んだ、フィリップ・スパーク(Philip Sparke)の傑作『ダンス・ムーブメント(Dance Movement)』をご紹介します。
『ダンス・ムーブメント』はどんな曲?
『ダンス・ムーブメント』は、ワシントンの米国空軍バンドの委嘱で作曲された曲です。
作曲は吹奏楽界の巨匠、このブログでも何度も取り上げているフィリップ・スパーク。
スパークは、この曲でサドラー国際作曲賞を受賞しています。
スパークの作品では、初めてピアノが使われた楽曲だそう。
演奏時間は約20分、グレードは6と、かなり難易度が高く、技術力や音楽性が要求される曲です。
『ダンス・ムーブメント』、楽曲のポイントは?
楽章は、
1.Ritmico
2.Molto Vivo((for the Woodwinds)
3.Lento(for the Brass)
4.Molto ritmico
の4つに分かれていますが、曲は切れ目なく演奏されます。
1楽章は、リズミカルで推進力を感じさせる曲調。
スパーク自身のコメントには「第1楽章は木琴、カバサ、タンブリン、ウッドブロックを用い、ラテン・アメリカ音楽の色彩を出そうと試みた」とあり、シロフォン、ウッドブロッグ、ウィップなど木の音が特徴的に使われています。
メロディーの合間を縫うように高音が鋭い合いの手を入れる、オープニング。
変拍子が続き、難しいリズムがたくさん出てきます。しっかりと縦を揃えていきましょう。
木管の速い連符のパッセージも多いですが、前へ前へと急ぐようなテンポに引きずられず、丁寧に吹きたいです。
2楽章は木管のみの楽章で、軽やかで明るい曲調です。
スパークのイメージは「英国の田舎のダンスの雰囲気」。
2楽章も引き続き明るくテンポ感のある始まり。
その後、タンバリンやスレイベルなどの打楽器に彩られた、鍵盤楽器とオーボエやソプラノサックスのたっぷりとしたフレーズ感のソロを経て、クレッシェンドで盛り上がったのち、静かになって金管にバトンタッチします。
3楽章は金管のみの楽章です。
3楽章について、スパークは「クラシカル・バレエの愛のデュエットのようにきこえるだろう」と述べています。
ゆったりとしたテンポの楽章で、ビブラフォン、ハープ、トランペットのミュートで静かに始まり、ホルンのソロが続きます。
次第に楽器が増えて音は厚みを増し、感動的な旋律が奏でられます。
第4楽章についてのスパークのコメントは、「いちばん長く、自分の過去10年間のスタイルで書いてあり、レナード・バーンスタインの影響を受けている。というのも私自身が「ウェスト・サイド物語」の幻想的なダンスに影響されていたからである」。
激しい打楽器太鼓群のソリで始まる第4楽章。
曲はスピード感を維持しながら、緊迫した雰囲気で進んでいきます。
エネルギーを抑えているかのようなpianoの場面と、そのエネルギーを放出するようなforteの場面が繰り返されます。
最後はグロッケンとチャイムがキラキラ感を演出し、管楽器が鳴り響く、鮮やかなフィナーレです。
『ダンス・ムーブメント』~YouTubeで聴ける音源~
龍谷大学吹奏楽部の演奏です。
カットなしで全編じっくり聴ける音源です。
この難曲&大編成にも関わらず、4楽章の頭などバシッと決まっていて、さすが強豪校ですね。
カメラワークも素敵で、見ごたえのある動画です。
2018年に行われた長崎県の音楽会での、活水高校の演奏です。
カリスマ指導者、藤重先生のもとで進化を遂げた活水高校。
この年、活水はこの曲でコンクールに臨みました。
特にエネルギッシュな4楽章、画面越しにも音圧が伝わってくるような迫力ある演奏です。
ベルギーのバンドの演奏です。
本来の編成に入っているもののなかなか見ることがない、チェロがいる動画です。
『ダンス・ムーブメント』の音源・CDはどこで手に入る?
ダンス・ムーブメント 土気シビックウインドオーケストラ Vol.7
アマチュアNo.1バンドと名高い土気シビックWOの演奏です。
他の収録曲には、
・東京都交響楽団首席トランペット奏者の高橋敦を迎えた『トランペット協奏曲』 (アレキサンドル・アルチュニアン / arr. 上埜 孝)
・アルフレッド・リード(Alfred Reed)『アルメニアンダンス・パートII』
・『天空の鳥たち 』(鈴木英史)
・『コンサートマーチ「ジョイフル・ポケット」(私の大事なおもちゃ箱) 』(渡部哲哉)
などがあります。
ダンス・ムーブメント/東京佼成ウインドオーケストラ
東京佼成ウインドオーケストラによる演奏のCD。現在の流通は中古販売か配信のみとなっています。
1.エボケーションズ/マーティン・エレビー
2.ダンス・ムーブメント
3.ゲールフォース/ ピーター・グレーアム
4.アルプスの詩/フランコ・チェザリーニ
の4曲が収録されています。
全7楽章、演奏時間21分、グレード6の大曲、『アルプスの詩』のフルバージョンにご注目!
『ダンス・ムーブメント』の楽譜はどこで手に入る?
各出版社のほか、楽天市場でも購入することができます。
ブレーンオンラインショップ ダンス・ムーヴメント/フィリップ・スパーク【吹奏楽輸入楽譜】
かなり難易度の高い『ダンス・ムーブメント』ですが、その分演奏しがいのある楽曲です。
ボリュームたっぷりフルサイズで演奏会のメインに、もちろんコンクールの自由曲で挑戦してみても◎!
音を揃える苦労とバッチリ決まった時の喜び、この楽曲でぜひ体験してみてくださいね。
参考URL:
ロケットミュージック「ダンス・ムーブメント」
https://www.gakufu.co.jp/products/suisougaku/UN/UN801/