吹奏楽の名曲シリーズ。
今回は、スパークの代表作である『ドラゴンの年(The Year of The Dragon)』をご紹介します。
『ドラゴンの年』はどんな曲?
グレード:5
演奏時間:約14分
作曲は現代吹奏楽の巨匠、イギリスのフィリップ・スパーク(Philip Sparke)。
吹奏楽民に愛されている、大人気の作曲家です。
当ブログでもすでに『フィエスタ』、『宇宙の音楽』、『ハイランド讃歌組』、『ダンス・ムーブメント』を取り上げています。
たくさんの作品があるスパークですが、なかでも『ドラゴンの年』はスパークの傑作ともいわれ、代表曲の一つに数えられています。
『ドラゴンの年』は、ウェールズを代表するブラスバンドであるコーリー・バンドの委嘱で、創立100周年の記念作品として1984年に作曲されました。
コーリー・バンドはウェールズを代表するバンドで、タイトルの「ドラゴン」はウェールズの国旗に描かれている赤い竜を意味しています。
1986年のブラス・バンド・ヨーロッパ・チャンピオン・シップの課題曲として取り上げられました。
ブラスバンドの曲として書かれたこの曲は、1985年にスパーク自身の手で吹奏楽に編曲されます。
改訂版について
そして、作曲から32年後の2017年、シエナ・ウインド・オーケストラの委嘱で、『ドラゴンの年(2017)』が作曲されます。
2017年版では、打楽器セクションや低音木管楽器群、ストリングベースなどが加えられ、 現代の国際的な吹奏楽編成となっています。
グレードや曲の長さは変わりません。
■ドラゴンの年(2017)(作曲:フィリップ・スパーク)ー吹奏楽マガジン「バンドパワー」 注)現在サイト閉鎖
『ドラゴンの年』、楽曲のポイントは?
曲は「TOCCATA」「INTERLUDE」「FINALE」の3楽章からなります。
1楽章「TOCCATA」(トッカータ)
1楽章は、スネアと金管の鋭い16分音符が作る、張り詰めた音楽から始まります。
不穏な雰囲気のなか、スネアのリムショットが打ち鳴らされ、ベルトーンの旋律が展開されます。
木管をメインとした明るく可愛らしい中間部が挟まったあとは、急激なクレッシェンドで緊張感のある雰囲気に戻ります。
そして、徐々に音楽は静まっていき、1楽章が終わります。
3楽章の中ではもっとも短いながら、緩急のある楽章です。
2楽章「INTERLUDE」(間奏曲)
ドラマティックなサウンドから幕を開ける2楽章。
すぐにコールアングレ(イングリッシュホルン)のソロが始まり、どこかノスタルジックで味わい深い旋律が響いてきます。
オーボエ、フルートのソロが終わると、あたたかで厚みのある感動的な音楽が奏でられます。
スパークらしい胸に迫るようなメロディー、美しくも切々としたサウンドです。
3楽章「FINALE」(終曲)
3楽章は木管楽器のすさまじい連符でスタート。
木管のなめらかな短いソロ、躍動感のあるパート。
バスーン2本が小さく歌い出した凱歌は、やがて金管楽器のファンファーレに引き継がれます。
クライマックスではテンポをあげ、怒涛の勢いで終結します。
最後の最後を締めるバスドラのかっこよさ…!!鳥肌が止まりません。
『ドラゴンの年』~YOUTUBEで聴ける音源~
吹奏楽ではなくブラスバンドの演奏ですが、『ドラゴンの年』を語るならこちらの動画は紹介せねばなりますまい。
Britannia Building Society Bandの、とても有名な演奏です。
1992年のブラスバンドヨーロッパ選手権で優勝した時のもので、「鼻血ドラゴン」の異名を持つ伝説の名演です。
近畿大学吹奏楽部の定期演奏会での演奏。
人数が多く迫力あります。金管が直線に並んでいる場面が映る3楽章のファンファーレは壮観。
YouTube上にある『ドラゴンの年』の動画、ほかにもよい演奏が多いので、ぜひいろいろ聴いてみてください。
第69回(2021年)全日本コンクールにて、『ドラゴンの年(2017)』で金賞をとった岡山学芸館高等学校と生駒市立生駒中学校の演奏も必聴です♪
『ドラゴンの年』の音源・CDはどこで手に入る?
「シオン×スパーク!」
スパークの指揮による、オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラの演奏。
2015年6月に開催された、第111回定期演奏会のライブ録音です。
『ドラゴンの年』と『宇宙の音楽』という二大代表曲が入っているほか、『オリエント急行』、近年作られた『風のスケッチ』も必聴です。
「スパーク&シエナ2」
2017年6月に文京シビックホールで行われたシエナ・ウインド・オーケストラの定期演奏会のライヴ録音盤。
こちらもスパーク本人の指揮で、『ドラゴンの年(2017年ver.)』を演奏しています。
『ドラゴンの年』の楽譜はどこで手に入る?
各出版社のほか、楽天市場でも購入することができます。
通常版と2017年度版の2種類があるので、楽譜をご購入の際はよくご確認くださいね。
緊張感のある1楽章、感動的な2楽章からの、疾走感ある3楽章。
聴けば聴くほど虜になる『ドラゴンの年』。
難曲ですが、ぜひチャレンジしてみてほしいです!
参考URL:
橋本音源堂 ドラゴンの年
http://h-ongendo1964annex.cocolog-nifty.com/blog/2007/01/post_5632.html
大阪大学吹奏楽団 ー あなたの知らない「ブラスバンド」の世界。「鼻血ドラゴン」とは?【サマコン曲紹介――ドラゴンの年編】
https://ouwo.biz/blog/6574/