『ブリュッセル・レクイエム』~テロへの怒りや哀しみ、追悼の想いを込めた吹奏楽曲~

『ブリュッセル・レクイエム』~テロへの怒りや哀しみ、追悼の想いを込めた吹奏楽曲~

吹奏楽の名曲シリーズ。

今回は、ベルト・アッペルモント作曲の『ブリュッセル・レクイエム( A Brussels Requiem )』をご紹介します。

『ブリュッセル・レクイエム』はどんな曲?

作品概要

タイトル:ブリュッセル・レクイエム( A Brussels Requiem )

作曲家:ベルト・アッペルモント(Bert Appermont)

演奏時間:約16分半

グレード:6

出版:ベリアト(Beriato Music)

作曲家ベルト・アッペルモント

ベルト・アッペルモントは、1973年生まれのベルギーの作曲家

新進気鋭の作曲家として高い評価を得ています。

『ブリュッセル・レクイエム』のほか、『ノアの方舟』、『アイヴァンホー』などの作品があります。

吹奏楽作品の作曲だけでなく、ポップス作品の編曲をしていたりもします。

Musicstore.JPのブログ - 【オススメ楽譜-吹奏楽】ベルト・アッペルモント編曲によるポップス作品

テロ事件に接した感情を曲に

『ブリュッセル・レクイエム』は、2016年に、オーストリアのブラスバンド「ブラスバンド・オーバーエスターライヒ」からの委嘱を受けて、ブラスバンド曲として作曲されました

題材となったのは、2016年3月22日に起きたブリュッセル連続テロ事件です。

朝のブリュッセル国際空港、続いて地下鉄マールベーク駅でイスラム過激派組織派による自爆テロ攻撃があり、35人が亡くなり、340人以上が負傷しました。

楽曲は事件を再現したものではなく、「事件に接した際の精神的不安や、怒り、哀しみ、犠牲者への追悼」を総合的に描いたものだそうです。

のちに吹奏楽やファンファーレ・バンド用に編曲されました。

コンクールで大ブーム

2018年にブリティッシュオープンというブラスバンドのコンテストで課題曲になった『ブリュッセル・レクイエム』。

日本の吹奏楽コンクールでも、2018年に3団体が金賞を受賞したことで大ブームになりました。

団体によってカットの仕方も様々。それぞれの団体の色が出て興味深いです。

『ブリュッセル・レクイエム』、曲の流れとポイントは?

曲のポイント

変拍子だらけの譜面、猛スピードの連符、金管の高音、高い技術力が要求されるソロなど難曲の要素が詰まっています。

ですが、アッペルモント氏がインタビューで「私は常にすべての楽器をベストな形で使うように心がけているので、どの奏者も自分の楽器のために特別に書かれたパートだと感じることができます」と語っているように、どの楽器にも見せ場があり、主役になれる楽曲だと感じます。

管楽器だけでなく打楽器も大活躍する曲です。ティンパニやスネアはもちろん、鍵盤にも非常に大きな存在感があります。

曲は4つの楽章に分かれています(間はあけずに続けて演奏されます)。

曲にはたびたびフランス民謡「月の光に」のメロディーが登場しますが、作曲者はこれを「テロで破壊された無垢の象徴」、「復興の可能性の象徴」として引用しているそうです。

1.  Innocence(罪もなく)

平和な日常を描写した穏やかで美しい1楽章。

クラリネットのソロで優しく始まり、鍵盤が呼応します。

ホルンが情感にあふれた「月の光に」を奏で、ほかの楽器も合流してきます。

ゆったりと流れるイングリッシュホルンと鍵盤の音色を塗りつぶすかのように、突如鋭く激しいトランペットとハイハットが現れます。

2. In Cold Blood(冷酷に)

前楽章の鋭いメロディーをトゥッティで演奏すると、曲は一気にただならぬ雰囲気に。

せわしなく動き回る連符は、事故現場の混乱、人々の恐怖を想起させます。

音の少ない緊迫した部分には、鍵盤やトロンボーンのソロがあります。

後半はスネアがリズムを刻み、金管による勇壮なメロディーが奏されます。

曲の最後は、チャイムが弔鐘を鳴らし、テンポを落としていきます。

3. In Memoriam – We Shall Rise Again(追悼 – 我ら甦らん)

トランペットのソリから始まり、低音が重々しく鎮魂のメロディーを紡ぎます。

ユーフォニアムソロの温かいメロディーは、オーボエ、イングリッシュホルン…と吹きつながれていきます。

音楽は希望の色をのせて膨らんでいきます。

4. A New Day(新たな日)

テンポアップし、曲調は一転、躍動した音楽に。

前半はジャズ風で、打楽器の伴奏を背景にトロンボーンやサックス、トランペットのソリ、ソロがあります。

後半はこれまでの楽章に登場した部分が随所に現れ、フィナーレを形作っていきます。

伸びやかな木管のメロディーの裏で鳴る金管の響きにも注目したいです。

一度静かになって冒頭を再現するクラリネット。そして堂々たる輝かしい音楽が鳴り響いたあと、再びテンポアップ。

スピード感もテンションも最高潮に盛り上がり、怒涛の勢いで曲を締めくくります。

『ブリュッセル・レクイエム』~YOUTUBEで聴ける音源~

精華女子高等学校

精華女子高校による、2018年の吹奏楽コンクールでの演奏です。

精華女子は、2018年に『ブリュッセル・レクイエム』で全国金を受賞した3団体のうちの1つ。

じっくり聴かせる1、3楽章、ものすごいスピードを維持しながら圧倒的な表現力を魅せる2、4楽章。

特に4楽章には鳥肌が止まりません。筆者が大大大好きな演奏です。

川金アンサンブルリベルテ吹奏楽団

ハイレベルで安定感のある演奏です。

3楽章冒頭はトランペットがオフステージで演奏しているので、引きの映像になっていますね。

フル尺ではありませんが、演奏風景を見られる動画のひとつです。

『ブリュッセル・レクイエム』の音源・CDはどこで手に入る?

「ブリュッセル・レクイエム / B・アッペルモント」

プロレベルの実力を持つ土気シビックウインドオーケストラ22枚めのCD。

丁寧で安定した演奏なので、フルで聴けるお手本にぜひ。

CD全体としても幅広い選曲で、レパートリーを増やしたい方にもぴったりです。

■収録曲
1. イントラーダ「S-S-S(スリーエス)」 (鈴木英史)
2. ダコタ・ラプソディー (マーク・キャンプハウス)
3. ブリュッセル・レクイエム (ベルト・アッペルモント)
4. ハノーヴァーの祭典 (フィリップ・スパーク)
5. Inspiration ~バンドネオンと吹奏楽のための~ (山下康介)
6. 優雅で感傷的なタンゴ (松浦伸吾)
7. 吹奏楽のための「クロス・バイ マーチ」 (三善 晃)
8. Carpe diem(カルペ・ディエム) (樽屋雅徳)
9. バレエ音楽「中国の不思議な役人」 (ベラ・バルトーク / arr. 加養浩幸)
10. 「白鳥の湖」によるパラフレーズ (ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー / arr. 井澗昌樹)

『ブリュッセル・レクイエム』の楽譜はどこで手に入る?

ブレーンなど各出版社のほか、楽天市場でも購入することができます。

 

実力派バンドなら一度は取り組んでみたい『ブリュッセル・レクイエム』。

曲の魅力ややりがいが大きいのはもちろん、広く演奏されることで題材となった事件について知り考える人が増えれば、なお意義のあることだろうと思います。

 

参考URL:

東京ブラスオルケスター ブラオケ的吹奏楽名曲名盤紹介~吹奏楽の散歩道〜 #12「ブリュッセル・レクイエム」

大阪大学吹奏楽団 ブログ 「ブリュッセル・レクイエム」楽曲紹介

WindBandPress – 「作曲は金(GOLD)を探すようなもので、特別で価値のあるものを見つけるには、本当に一生懸命探さなければなりません」作曲家インタビュー:ベルト・アッペルモント氏(Bert Appermont)

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