吹奏楽の名曲シリーズ。
今回は、ヤン・ヴァンデルロースト作曲の『スパルタクス(Spartacus – Symphonic Tone Poem)』をご紹介していきます。
『スパルタクス』はどんな曲?
作品概要
タイトル:スパルタクス(Spartacus – Symphonic Tone Poem)
作曲家:ヤン・ヴァンデルロースト(Jan Frans Joseph Van der Roost)
演奏時間:約14分
グレード:6
出版:デ・ハスケ(de Haske)
ヤン・ヴァンデルロースト人気の火付け役
作曲者はベルギーの人気作曲家、ヤン・ヴァンデルロースト(Jan Frans Joseph Van der Roost)。
『アルセナール』、『ダイナミカ』、『プスタ』など、人気の高い吹奏楽作品を多数作曲しています。
『スパルタクス』が作曲されたのは1988年で、初期の頃の作品です。
この曲を機に、日本でも広く名を知られるようになりました。
物語としての「スパルタクス」
「スパルタクス」は古代ローマで活躍した剣闘士の名前です。
当時のローマ帝国は領土拡大のために次々と戦争を起こし、制圧した国の民を奴隷として働かせていました。
奴隷の中には、見世物として戦わされる「剣闘士」もいました。
紀元前73年、剣闘士奴隷たちはスパルタクスを中心に蜂起し、ローマ軍の鎮圧部隊を何度も退けながら、自由を求めて戦いました(第三次奴隷戦争(スパルタクスの乱))。
最終的にはクラッスス率いるローマ軍に負けてしまいますが、勇敢なスパルタクスの名は歴史に刻まれることになったのです。
映画、ドラマ、バレエ、ミュージカルなど様々な分野で、「スパルタクス」を題材にした作品が数多く作られました。
イメージは作りやすいが、難易度は高い
大きく3つのシーンを描く構成で、ストーリーもはっきりしているので、曲のイメージは作りやすいでしょう。
一方でグレードは6と難易度は高いです。
拍子がかなり複雑で、最初は楽譜を追うだけでも大変だと思われます。
最高潮のクライマックスまでスタミナ切れしないようにすることも大事ですね。
『スパルタクス』、曲の流れとポイントは?
スパルタクスは、大きく3つの部分で構成されています。
第一部
ティンパニと低音の重々しい響きでスタート。苦しい奴隷労働を思わせます。
オリエンタルな旋律が奏でられます。
その後の躍動感のあるパートは、奴隷たちが逃げ出し、力と知恵で追手を撃破していくようなエネルギッシュさを感じます。
変拍子の連続で大変ですが、ビシっと揃えて迫力ある戦闘シーンを演出できるとよいですね!
第二部
スパルタクスと恋人との恋愛の様子が描かれています。
戦いの合間のひととき、ゆったりと穏やかな音楽が奏でられ、一昔前の映画音楽っぽさも出ています。
かわるがわるいろいろな楽器のソロ、ソリがあって聴かせどころです。
第三部
激しい戦闘シーンへ。
最後の出陣、勇敢な戦いの後、「12 の音色の蓄積が奴隷の磔刑を象徴しています」(ヴァンデルロースト自身のコメント)とあるように、不協和音で曲は一度静まります。
スパルタクス軍は負けてしまいますが、そこで曲は終わりません。
イングリッシュホルンのソロに続くのは、愛と栄光の音楽。怒涛の勢いでラストまで駆け抜けます。
打楽器は、スコア通りに演奏するなら、チャイムや銅鑼やCrotales(クロテイル=アンティークシンバル)も必要になります。
Timpaniは大活躍、Vibraphoneも第二部冒頭に幻想的なソロがあります。
意外と目立つ重要なパートがTemple Blockで、戦闘シーンにアクセントを加えます。
『スパルタクス』~YOUTUBEで聴ける音源~
有名曲のわりに、YouTubeに動画の少ない『スパルタクス』ですが、以下の動画のほか、アマチュアバンドの演奏動画がいくつかアップされているので、チェックしてみてください。
東京佼成ウインドオーケストラ
プロの名演。トップヒットの大阪市音楽団の演奏と聞き比べるのが楽しいです。
ラスト30秒の、畳みかけるようなエンディングがかっこいい~!
ハル・レナード・コンサートバンド (Hal Leonard Concert Band)
フルスコアを見ながら曲を聴けるので重宝します。
『スパルタクス』の音源・CDはどこで手に入る?
ヴァン・デル・ロースト&シエナ・ウインド・オーケストラ
ヴァンデルローストの指揮、シエナの演奏です。
コンクール自由曲で人気の『スパルタクス』や『モンタニャールの詩』、近年作曲された『ナマセ・ラプソディ』、『グロリオーゾ』など全6曲が収録されています。
<収録曲>
ヤン・ヴァン・デル・ロースト
1. ナマセ・ラプソディ
2. カンタベリー・コラール
3. 交響詩「スパルタクス」
4. グロリオーゾ~グランド・オーバーチュアー~
5. クレデンティウム
6. 交響詩「モンタニャールの詩」
ヴァンデルロースト
スパルタクス/モンタニャールの詩/シンフォニエッタ「水都のスケッチ」
ヴァンデルローストの指揮、フィルハーモニック・ウインズ 大阪の演奏です。
もともと大阪市音楽団のために書かれた大曲『シンフォニエッタ~水都のスケッチ』は、オオサカンの演奏でまた一味違うものになっています。
<収録曲>
【1】交響詩「スパルタクス」
Spartacus -Symphonic Tone Poem-
【2】交響詩「モンタニャールの詩」
Poeme Montagnard
シンフォニエッタ ~水都のスケッチ~
Sinfonietta -Suito-Sketches-
【3】水都に着いて
The Landing
【4】剣舞
Sword Dance
【5】河畔の夕暮れ
Nightfall by the River
【6】未来に向かって
Towards the Future
『スパルタクス』の楽譜はどこで手に入る?
各出版社のほか、楽天市場でも購入することができます。
ヤン・ヴァンデルローストのダイナミックな音楽を堪能できる『スパルタクス』。
英雄「スパルタクス」の活躍を思い浮かべながら聴いてみてくださいね!
参照ページ;
橋本音源堂 交響詩「スパルタクス」
http://h-ongendo1964annex.cocolog-nifty.com/blog/2016/11/post-e8c8.html
吹奏楽マガジンBAND POWER 富樫哲佳の吹奏楽曲でたどる世界史
【第12回】スパルタクスの反乱(紀元前73~71年頃)交響詩≪スパルタクス≫(ヤン・ヴァンデルロースト)
http://www.bandpower.net/soundpark/togashi_sp/00_history/12_spartacus/01.htm