吹奏楽の名曲シリーズ。
今回は、ヤン・ヴァンデルロースト作曲の『モンタニャールの詩』をご紹介します。
『モンタニャールの詩』はどんな曲?
作品概要
タイトル:モンタニャールの詩(Poeme Montagnard)
作曲:ヤン・ヴァンデルロースト(Jan Van der Roost)
演奏時間:約19分
グレード:6
出版社:デ・ハスケ (De Haske)
「モンタニャール」ってどういう意味?
『モンタニャールの詩』は、ベルギーの作曲家ヤン・ヴァンデルローストによって1996年に作曲された吹奏楽曲。
イタリアのヴァッレ・ダオスタ州アオスタにあるヴァル・ダオスト吹奏楽団から委嘱され、その地域を題材にして曲が作られました。
ヴァッレ・ダオスタ州は、イタリアの北西部、アルプス山脈の麓にあり、古くからアルプス越えの要衝となっています。
長い歴史をたどると、アルプスは軍事的な要路としても幾度となく利用されてきました。
要衝として栄えたアオスタの地もまた、多くの民族による支配を経験しています。
一方で、自給自足の暮らしや民俗舞踊など、独自の文化が育まれてきた土地でもあります。
「モンタニャール(Montagnard)」とは、フランス語で「山地民」「山上の人」というような意味。
『モンタニャールの詩』は、山岳地帯の厳しい自然の中で生活してきた人々の暮らしや文化、歴史を音楽にした曲なのです。
多彩な表情をもった曲
『モンタニャールの詩』は全体で19分前後になる大曲ですが、曲の雰囲気が次々に移り変わり、聴く人を飽きさせない構成になっています。
山の険しい自然を思わせるオープニングから始まる曲は、敵国の侵攻を彷彿とさせる戦いの音楽、フォークソングや舞踊のシーン、領主カトリーヌ・ド・シャランと領民との絆を描いたような旋律などを経て、壮大なクライマックスへと繋がっていきます。
歴史的題材を得意とするヴァンデルローストの手腕により、「モンタニャール」の情景、暮らしや文化、そして歴史が、一つの曲として見事にまとめられています。
『モンタニャールの詩』、曲の流れとポイントは?
ウインドマシーンや打楽器から始まる幻想的な冒頭は、山の険しい自然を描写します。
トランペットが奏でる印象的な5音は、曲全体の核となるフレーズです。
ホルンが重厚な旋律を奏すと、リズム隊が導くように盛り上がっていき、壮大な音楽が広がります。
美しく、時に過酷で、しかし堂々たる山々の姿を描いています。
パーカッションソリが躍動して静まると、短い民族音楽風のセクションが挟まれ、激しく緊迫した戦いの音楽が現れます。
その後、コンガの軽快なリズムで明るく朗らかな旋律が木管を中心に展開されます。
タンバリンに導かれて、4本のリコーダーによって、素朴で懐かしいルネサンス・ダンスが奏されます。
メロディーは木管楽器、そしてトランペットに引き継がれ、全合奏へ。
再び重々しい音楽になりますが、ユーフォニアムの優しいソロが芽吹くように紡がれます。
この地域をおさめた領主カトリーヌ・ド・シャランを歌ったセクション。
一度静まると、ホルンのソロが響き渡ります。
再び木管によって民族音楽が奏されると、曲はいよいよフィナーレへ。
これまでのテーマが煌びやかな響きで次々登場し、ティンパニが勇ましく打ち鳴らされると、冒頭のトランペットの5音で堂々と締めくくられます。
『モンタニャールの詩』~YOUTUBEで聴ける音源~
東海大学付属高輪台高等学校吹奏楽部
2010年の全日本吹奏楽コンクールで、自由曲『モンタニャールの詩』で金賞をとった東海大高輪台高校の演奏です。
テレビでも取り上げられた有名な演奏なのですが、本当に完成度が高い…!
重厚な金管のサウンド大好きです。
木管の技術力もすさまじく、5:51~、速いテンポでの一糸乱れぬ美しい連符の上昇音階に感動してしまいました。
『モンタニャールの詩』の音源・CDはどこで手に入る?
スパイラル・レボリューション/東海大学付属高輪台高等学校吹奏楽部
東海大高輪台高校による8枚目のCD。
先の項目でも紹介した高輪台の演奏ですが、こちらのCDにはセッションレコーディングと定期演奏会でのライブレコーディング、2種類の『モンタニャールの詩』が収録されているのがポイントです!
◆収録曲
—セッションレコーディング—
[1] 交響詩モンタニャールの詩 ~アルプスに伝わる愛と勇気の物語~ (ヤン・ヴァン=デル=ロースト)
[2] 喜歌劇「こうもり」セレクション (ヨハン・シュトラウス2世/編曲:鈴木英史)
[3] 百年祭 (福島弘和)
[4] 行進曲「ラメセスII世」 (阿部勇一)
[5] イダム (石毛里佳)
[6] 鷲の舞うところ (スティーヴン・ライニキー)
[7] エアーズ (田嶋 勉)
—ライブレコーディング—
[8] スパイラル・レボリューションズ (鈴木英史)
[9] パガニーニの主題による狂詩曲 (セルゲイ・ラフマニノフ/編曲:森田一浩)
[10] ミュージカル「ミス・サイゴン」より 序曲 我が心の夢 サイゴン陥落 今がこのとき (クロード=ミッシェル・シェーンベルグ/編曲:宍倉 晃)
[11] 喜歌劇「こうもり」セレクション (ヨハン・シュトラウス2世/編曲:鈴木英史)
[12] 交響詩「モンタニャールの詩」 ~アルプスに伝わる愛と勇気の物語~ (ヤン・ヴァン=デル=ロースト)
以下の音源もオススメです。
『モンタニャールの詩』の楽譜はどこで手に入る?
各出版社のオンラインショップで購入することができます。
交響詩「モンタニャールの詩」/ヤン・ヴァンデルロースト【吹奏楽輸入楽譜】 ー ブレーンオンラインショップ
楽天市場でも購入することができます。
※出版社により、価格や在庫状況が異なります。
19分にわたる大曲であり難曲の『モンタニャールの詩』。
音楽に込められた風景や歴史・物語を想像しながら、演奏してみてくださいね。
参考URL:
パイオニア - コラム 第23回「モンタニャールの詩」と歴史上の英雄たち パイオニア吹奏楽団