吹奏楽の名曲シリーズ。
今回は、クロード=ミシェル・シェーンベルクの手がけた大ヒットミュージカル「ミス・サイゴン」を吹奏楽にアレンジした楽曲、『ミュージカル「ミス・サイゴン」より(Miss Saigon)』をご紹介します。
『ミュージカル「ミス・サイゴン」より』はどんな曲?
ミュージカル「ミス・サイゴン」について
ミュージカル「ミス・サイゴン」の作曲者は、クロード=ミシェル・シェーンベルク(Claude-Michel Schönberg)。
クロード=ミシェル・シェーンベルクはフランスの作曲家・音楽プロデューサーで、俳優・歌手の顔も持っています。
脚本はシェーンベルクとアラン・ブーブリル(Alain Boublil)の共作で、この2人は他にも「レ・ミゼラブル」(Les Misérables)などいくつかのミュージカルを作っています。
1989年にロンドンのウエストエンドで初演され、ブロードウェイでもロングラン、その後日本も含めた世界各国で上演されています。
日本では2022年にも公演が予定されており、30年以上経った今でも根強い人気があるミュージカルです。
「ミス・サイゴン」のストーリー
ジャコモ・プッチーニのオペラ『蝶々夫人』を基にした、アメリカ人男性とアジア人女性の悲恋の物語です。
舞台はベトナム戦争終結間近の首都サイゴン。
家を焼かれて田舎から逃げ延びてきた17歳の少女キムは売春宿で働くことになり、そこで客として現れた米兵のクリスと出会います。
二人は恋に落ち、一緒になることを約束しますが、その後のサイゴン陥落の混乱の中でキムをアメリカに連れて行こうとしたクリスは友人に反対され、キムは置き去りになってしまいます。
3年後、クリスはアメリカで別の女性と結婚しています。
一方のキムは、クリスとの子供である息子タムを生み、貧しい暮らしをしながらも、クリスが迎えに来てくれることを信じて待ち続けていました。
クリスは友人から、自分に子供がいることを聞かされ、キムとタムのいるバンコクへと向かいますが…。
『ミュージカル「ミス・サイゴン」より』、楽曲のポイントは?
吹奏楽譜はいくつかあり、宍倉晃の編曲が最もメジャーで、次いでヨハン・デ・メイのものがよく演奏されています。
宍倉版はグレード5、演奏時間は約6分20秒。
一方、ヨハン・デ・メイ版はグレード4、演奏時間は約19分と長く、コンクールで演奏するにはカットしなければなりませんが、演奏会の1曲にはオススメです。
両方の楽譜を混ぜて演奏している団体も見られます。
ここでは、宍倉版のアレンジを取り上げます。
楽曲は、『序曲』〜『我が心の夢』〜『サイゴン陥落』〜『今がこのとき』の4曲構成です。
『序曲』冒頭は、鍵盤、木管の連符により、張り詰めたトーンで始まり、重厚で迫力あるパートも現れます。
ソプラノサックスの奏でるメロディーには東洋風、エキゾチックなムードがあります。
『我が心の夢』はヒロインやお店のコールガールたちが自分たちの夢を歌い上げるシーンの曲。
物悲しく、でも痛切な意志を感じる楽曲です。
そして緊迫感のある曲調の『サイゴン陥落』へ。
ミュージカルのハイライト、アメリカ人を乗せたヘリコプターが大使館を飛び立つシーンがあるのはこの楽曲です。
各団体が工夫して、リアリティのあるヘリコプターの音を演出しています。
楽譜ではマーチングスネアドラムとバスドラムに「ヘリコプターサウンド」と書かれていますが、ティンパニやバスドラムの皮を叩いたり、バスドラムを横に倒して鎖を置いて叩いたりしている団体も。
マレットも、太めのスティック、マレットを束ねた柄の部分、竹を割ったもの(「ささら」)などが使われています。
『今がこの時』は、いとこで元婚約者であるトゥイが嫉妬からタムを殺そうとし、息子を守るためにキムがトゥイを銃殺するシーンの曲です。
怒り、憎しみ、不安の中にも強い覚悟をにじませるキムの心が、美しいメロディーで表現されています。
曲は盛り上がり、感動的なラストとなります。
『ミュージカル「ミス・サイゴン」より』~YOUTUBEで聴ける音源~
フィルハーモニック・ウインズ 大阪
フィルハーモニック・ウインズ 大阪の演奏です。
プロなので技術が高いのはもちろんですが、テンポが比較的ゆったりとしていて威厳を感じる演奏です。
埼玉栄高等学校吹奏楽部
第50回(2002年)の吹奏楽コンクール全国大会で金賞を受賞した、埼玉栄高校の演奏です。
この演奏のインパクトが、「ミス・サイゴン」を一躍人気曲へと押し上げたのでした。
私が好きなのは第14回(2008年)西関東吹奏楽コンクールでの、久喜東中学校吹奏楽部の演奏です。
現在、動画はなくなっていますが、小編成とは思えない重厚で情感豊かな素晴らしい演奏ですので、もし見つかったらぜひ聴いてみてください。
『ミュージカル「ミス・サイゴン」より』の音源・CDはどこで手に入る?
全日本吹奏楽コンクール 名門の饗宴!高校Ⅲ
吹奏楽コンクールの名演が収録された、「名門の饗宴!」シリーズ。
『ミュージカル「ミス・サイゴン」より』は、2つの演奏が収録されています。
・2002年の埼玉栄高等学校
・2003年の北海道札幌白石高等学校
埼玉栄は宍倉晃編曲、札幌白石高校はヨハン・デ・メイの編曲です。
ミス・サイゴン:25周年記念公演 in ロンドン [Blu-ray]
原作であるミュージカルを見れば、楽曲の理解をさらに深めることができるでしょう。
DVD・ブルーレイならお手頃価格で海外での公演を見ることができます。
日本公演も定期的に行われているので、臨場感たっぷりの舞台を見に行って感動を味わうのもいいですね!
『ミュージカル「ミス・サイゴン」より』の楽譜はどこで手に入る?
各出版社のほか、楽天市場でも購入することができます。
こちらの楽譜は宍倉晃編曲バージョンです。
ベトナム戦争を背景にした悲恋の物語が吹奏楽になった『ミュージカル「ミス・サイゴン」より』。
悲しくも美しい楽曲を、ぜひ演奏してみてくださいね。
参考URL:
Wikipedia ミス・サイゴンhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%B4%E3%83%B3