吹奏楽の名曲シリーズ。
今回は、髙橋伸哉作曲の『Jalan-jalan 神々の島の幻影』をご紹介します。
『Jalan-jalan 神々の島の幻影』はどんな曲?
作品概要
タイトル:Jalan-jalan 神々の島の幻影
作曲:髙橋伸哉
演奏時間:約6分10秒
グレード:3.5
メーカー:ブレーン株式会社
作曲者について
高橋 伸哉は、1962年、宮城県仙台市生まれの作曲家です。
第47回全日本吹奏楽コンクール(1999年)の課題曲『K点を越えて』の作曲者として有名です。
他の作品に『写楽』、『ゴールド・ラッシュ!』などがあります。
『Jalan-jalan 神々の島の幻影』は、2000年5月、浜松交響吹奏楽団の第27回定期演奏会初演されたのち、翌年2001年3月の「第4回“響宴”」(吹奏楽の未出版・未発表の邦人作品を広く紹介する目的で開催されている演奏会)で演奏されています。
さらに、2005年ドイツ・バイエルン州吹奏楽コンクール上級カテゴリー課題曲にもなりました。
参照:http://roko17.blog.fc2.com/blog-entry-1280.html
曲のタイトルはどういう意味?
「ジャラン・ジャラン」という言葉は、インドネシア語で「散歩」や「徒歩旅行」といった意味があるそうです。
有名な旅行雑誌/サイトの名前にも使われ、CMでもたびたび耳にするこの言葉、インドネシア語から来ていたんですね。
バリ島では自然を司る神々を信仰しており、島内には多くの寺院や神聖なスポットがあります。
また、人々が行う祭りや儀式、毎日の祈りやお供えなど、その信仰はバリ島の文化や日常生活に溶け込んでいます
それらのことから、バリ島は神々の島と呼ばれるようになりました。
作曲者の解説には、「ある日、島内をそぞろ歩きしながら『神々の島』とも呼ばれるバリ島の様々な情景に遭遇する…そのようなイメージをこの曲名に込めました」と書かれています。
インドネシアの伝統音楽「ガムラン」
曲の解説文には出てきませんが、インドネシアの伝統音楽は「ガムラン」と呼ばれています。
金属、木、竹などを使った独自の楽器を使った合奏やその編成を指しています。
リズムやメロディーにも特徴があり、この楽曲はそうした音楽の特徴を取り入れて作られたそうです。
かつてインドネシアは沖縄と盛んに交流していた時期があり、ガムランの音階は「琉球音階」と呼ばれる、レとラを除いたド・ミ・ファ・ソ・シ・ドの5音で構成される音階とよく似ています。
ガムランについては、小学生向けに作られているという下記のサイトが非常にわかりやすく、また詳しく説明されているので、お時間のある方はぜひご覧ください!
こちらも参考になります。
ガムラン スカル・ジュプン – バリ島のガムラン音楽について
曲の構成は?
楽曲は4つの部分に分かれ、それぞれ「夜明けの風景」「朝の市場の風景」「昼下がりの海辺の風景」「たいまつの明かりの中、“ケチャ”が繰り広げられる夜の風景」を描写しています。
参照:ブレーンオンラインショップ Jalan-jalan 神々の島の幻影【オリジナル版】
「ケチャ」とはバリの合唱舞踊の名前。数十人の男性たちが輪になって叫ぶチャ、チャ、チャ!という掛け声はとても迫力があります。
『Jalan-jalan 神々の島の幻影』、曲の流れとポイントは?
「夜明けの風景」
長く伸ばした各楽器の音が重なっていき、打楽器とともにクレッシェンドしていきます。
次に、迫力ある低音からだんだんと高音に引き継がれていく、堂々としたメロディー。
自然あふれる島の神々しい夜明けを感じさせるオープニングです。
「朝の市場の風景」
軽快なテンポとリズムと爽やかなメロディーで、朝の活気ある風景を描写します。
ウッドブロックやシロフォンが軽やかに響きます。
低音と高音の短いかけあいの後、さっぱりと終わります。
「昼下がりの海辺の風景」
おおらかなメロディーのゆったりした音楽。
木管からクレッシェンドして金管に受け継がれていくところなど、自然の豊かさや広がりを感じられます。
サックスソロで静かに終わっていきます。
「たいまつの明かりの中、“ケチャ”が繰り広げられる夜の風景」
テンポアップしてエネルギッシュな音楽。
木管高音による複雑なリズムはガムランの「コテカン」というもので、二人または二組が互い違いにリズムを刻んでひとつのメロディーのように演奏しています。
金管と打楽器による激しい打ち込みなども登場し、高いテンションを保ったまま、盛り上がりの頂点で終曲します。
『Jalan-jalan 神々の島の幻影』~YOUTUBEで聴ける音源~
早稲田吹奏楽団
大人数の演奏ですが、安定していて良いお手本になる動画だと思います。
大西学園高等学校
2004年から2010年までコンクール東日本大会を「高校フェスティバル」部門で出場していた大西高校。
チューバまでもが吹きながら躍り、奏者みんなが全身で曲を表現しながらも、演奏は少しもぶれておらず、本当に素晴らしいパフォーマンス。
衣装替え、オカリナの合奏、ケチャの再現など見ていて本当に楽しいですし、激しい振り付けをしながらの演奏は、一体どれだけ練習したんだろう…と感動してしまいます。
『Jalan-jalan 神々の島の幻影』の音源・CDはどこで手に入る?
浜松交響吹奏楽団
交響組曲第2番「GR」より
全国トップレベルの実力派アマチュアバンド、浜松交響吹奏楽団。
楽団アレンジャーの遠藤幸夫氏が編曲した楽曲も複数収録されています。
『Jalan-jalan 神々の島の幻影』は明るく伸びやかで素敵な演奏です。
Amazonでは中古のみの取り扱い、UnlimitedでのストリーミングやMP3での購入も可能です。
■収録曲
1.Jalan-jalan~神々の島の幻影~(高橋伸哉)
2.吹奏楽のためのプレリュード~「時計台の鐘」の旋律による(鈴木英史)
3.出エジプト記(天野正道)
4.「愛の選択」のテーマ(ハワード/遠藤幸夫編)
5.ジョイフル・メドレー(遠藤幸夫編)
6.HANA-BI(久石譲/遠藤幸夫編)
7.青春の輝き(カーペンター/遠藤幸夫編)
8.主よ、私を導きたまえ(ギリングハム)
9.交響組曲第2番「GR」より(天野正道)
また、前述した演奏会「第4回“響宴”」をCD化した、『21世紀の吹奏楽「響宴IV」~新作邦人作品集』もオススメです(こちらも中古CD、もしくは配信で聴くことができます)。
『Jalan-jalan 神々の島の幻影』の楽譜はどこで手に入る?
ブレーンオンラインショップで購入することができます。
オリジナルの大編成版と、30人から演奏可能な小編成版が販売されています。
わずか6分強の短い曲の中に、バリ島のエッセンスがギュッと詰まっている『Jalan-jalan 神々の島の幻影』。
曲を聴きながら、また演奏しながら、神々の宿る島の情景を思い浮かべてみてくださいね。
そのほかの参考サイト:
吹奏楽コンクールデータベースMusica Bella 団体名: 大西学園中学校・高等学校
https://www.musicabella.jp/groups/view/4755