吹奏楽の名曲シリーズ。
今回は、ドビュッシー作曲の『喜びの島(L’Isle joyeuse)』をご紹介します。
『喜びの島』はどんな曲?
作品概要
タイトル:喜びの島(L’Isle joyeuse)
作曲:ドビュッシー(Claude Achille Debussy)
演奏時間:約6分
グレード:4~5
※吹奏楽曲『喜びの島』には複数の編曲があり、こちらは目安です。
ドビュッシーについて
クロード・ドビュッシーはフランスの作曲家で、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍しました。
ピアノやオーケストラの作品を数多く残しています。
ピアノ曲の代表作品には『月の光』、『2つのアラベスク』などが、管弦楽曲には『交響詩「海」管弦楽のための3つの交響的素描』などがあります。
この曲のエピソード
『喜びの島』は、フランスの画家ワトーの描いた絵画「シテール島の巡礼」に着想を得たと言われています。
シテール島は愛の女神ヴィーナスが上陸されたとされる、ギリシャにある島です。
この曲が作曲されたのは1904年、ドビュッシーが42歳の時でした。
この頃ドビュッシーは、愛人で後の妻となるエンマ・バルダックと不倫中で、彼女との駆け落ち旅行中にこの曲が作られたと言われています(行先はシテール島ではなくイギリスのジャージー島でしたが)。
この曲の特徴である装飾音や自由なリズム、色彩豊かな表現は、恋の喜びに浸る当時のドビュッシーの心情が表れているかのようです。
有名曲である『喜びの島』は、音楽を題材にしたマンガや小説で取り上げられることも。
二ノ宮知子のマンガ『のだめカンタービレ』や、恩田陸の小説『蜜蜂と遠雷』では、どちらも登場人物がコンクールの舞台で演奏する曲として登場します。
吹奏楽版の特徴
ピアノ曲の完成後、ドビュッシーの指示で、ベルナルディーノ・モリナーリによって管弦楽版が書かれました。
吹奏楽への編曲は複数あり、吹奏楽コンクールの自由曲でも演奏機会が多い譜面には真島俊夫版、小野寺真版、今村愛紀版などがあります。
吹奏楽編曲では音色の幅が増え、ピアノの繊細な和音がより立体的に表現されているのが特徴。
アンサンブル楽譜も、サックスや木管、混合など多様な楽譜が販売されています。
『喜びの島』、曲の流れとポイントは?
曲の始まりはフルートとクラリネットのソロ。
長く伸ばされるトリルと幻想的なフレーズが特徴的です。
低音パートによるハバネラのリズムに導かれ、木管による軽やかなメロディー(主題)が現れます。
やがて心細げなサックス(小編成ではトランペット)のソロが奏されると、そこから一気にクレッシェンドして、一瞬、はじけるような明るさが訪れます。
続く3連符の連なりが新たなメロディーとなって広がり、タンバリンやカスタネットのリズムが耳に心地よく響きます。
強弱の効いた低音から高音へと跳ねるような旋律は、抑えきれない高揚感がにじみます。
再び主題が現れたあと、しっとりと美しい音楽が始まります。
抒情的なメロディーが、満ち足りた喜びを描いているようです。
やがて跳躍の多い旋律が現れ、木管が高音から低音までを行き来します。
後半、メロディーは少しずつ不穏な雰囲気を帯び、どこか嵐の気配を感じさせます。
これまでに提示されてきた旋律が繰り返されます。
緊張感のある場面、一気に明るく盛り上がる場面が交互に現れる様子は、「喜びの島」までの航海、その海の変化を表現したものでしょうか。
希望と不安のせめぎあいのような感情の揺らぎのようでもあります。
やがてファンファーレのような明るい音楽が響き渡り、幸せに満ちた明るく華やかなフィナーレが訪れます。
これまでの旋律が駆け足で現れ、盛大に曲は幕を閉じます。
『喜びの島』~YOUTUBEで聴ける音源~
洗足学園音楽大学
落ち着いたテンポ設定で、細部まで丁寧に表現されています。
堂々たるフィナーレのキラキラした響きが圧巻です。
『喜びの島』の音源・CDはどこで手に入る?
小編成レパートリー・コレクション Vol.4 恋す蝶
フィルハーモニック・ウインズ大阪による、小編成作品を集めたシリーズの4作目。
小編成バンドのコンクール自由曲や演奏会の選曲にオススメ。
『喜びの島』は小野寺真編曲版です。
◆収録曲
[1] いつも風 巡り会う空/福島弘和
[2] 吹奏楽のため叙事詩「ジャンヌ・ダルク」より(コンクール・エディション)/坂井貴祐
[3] 喜びの島(小編成)/クロード・ドビュッシー(編曲:小野寺真)
[4] レパントの海戦/広瀬勇人
[5] アベージュ アルカンシェル/福島弘和
[6] フニクリ・フニクラ狂詩曲(小編成)/ルイージ・デンツァ(後藤洋)
[7] 「フェニックス」~時を超える不死鳥の舞い/八木澤教司
[8] 恋す蝶/井澗昌樹
[9] Key West Pink!/西邑由記子
スパイラル・アズール/東海大学付属高輪台高等学校吹奏楽部
高輪台高校の「スパイラル」シリーズ19作目。
委嘱曲も複数収録されています。
『喜びの島』は真島俊夫版が演奏されています。
◆収録曲
[ライブレコーディング]
1.宮下秀樹:吹奏楽のための「エール・マーチ」
2.福島弘和:風の時代
3.アルフレッド・リード:アレルヤ!ラウダムス・テ
4.クロード・ドビュッシー/編曲:真島俊夫:喜びの島
5.芳賀 傑:水面に映るグラデーションの空
[セッションレコーディング]
6.福島弘和:メテオライト ~永遠に煌めく太陽の炎~
7.ヨハン・デ・メイ:交響曲第1番「指輪物語」 より
8.天野正道:沢地萃
9.フェルディナン・エロルド/編曲:ヴィル・ヴァン・デル・ビーク:歌劇「ザンパ」序曲
10.鈴木英史:スパイラル・アズール
『喜びの島』の楽譜はどこで手に入る?
『喜びの島』の楽譜は、各出版社で取り扱っています。
喜びの島【大編成】/C.ドビュッシー(真島俊夫)【吹奏楽ライセンス楽譜】ーブレーンオンラインショップ
喜びの島【小編成】/C.ドビュッシー(小野寺 真)【吹奏楽ライセンス楽譜】ーブレーンオンラインショップ
楽天でも以下の楽譜が購入できます。
ピアノ曲の豊かな色彩を、吹奏楽の多様な楽器で表現した『喜びの島』。
幻想的な旋律や躍動感あるリズムなど、ドビュッシーの音楽の魅力を堪能できる一曲です。
参考サイト:
wikipedia - 喜びの島
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%96%9C%E3%81%B3%E3%81%AE%E5%B3%B6
研究ノート 演奏表現を考える ドビュッシー「喜びの島」 池田 京子
https://www.himeji-hc.ac.jp/information/journal_of_studies/42ikeda.pdf